月見草
今回の雑考対象はエンディングテーマです。曲は短い割りに、恐ろしく技巧がかかっている楽曲です。
しかし、纏まった文章量は凄く寂しいものに(苦笑)
まずは曲の構成を見ていくことにしよう。
ストリングスによる空間の展開と静寂
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ピアノアルペジョ、ベース、ドラム&パーカッションによる変拍子ポリリズム
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ピアノパートの更なる挿入、旋律の変化と収束
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(ピアノメロへ、以降ループ)
ストリングスの5度の重ねによって空間が開けていくイメージが植えつけられる。
それは永かった夜が明け、新たな一日が始まりを告げた事を意味しているのだろうか。
朝の来ない夜はない………夜が夜たりえるのは、その対となる太陽、昼があってこそである。
(そして真のEndingにおいては、主人公たちの「真実の月」の開放と、輝夜達の「月の使者」からの開放という二つのイメージを想起できるかもしれない。)
そして一瞬の静寂の後に始まるのがピアノ、ベース、ドラム&パーカッションによる変拍子のポリリズムである。
聞いてのとおり、この旋律は"永夜抄 〜Eastern Night."を基にしたモノであるのは高音部に鳴るピアノアルペジョを聴けば一発で理解できるだろう。
そう、ゲームの開幕で見せたあの幻想郷の風景は、まだ続いているのである。
淡い色で包まれたかのような、陽炎のごとき揺らぎを持った風景は、永夜の術によるものではないのだろう。
しかし、もともとの楽曲が複合11拍子(3+3+3+2)であったのに対して、コチラでは17拍子となっている。
基本は4+5+4+4であると考えられるが、各パートごとに異なるリズムの組み立てを行っており、
その絡み合う様が非常に面白いのである。
- ピアノ(永夜抄の高速アルペジョ、括弧内は倍速(34拍子)で表記):3+4+3+3+4(3+3+3+5+3+3+3+3+3+3+2)
- ピアノ(フィルインで聞こえるパート):4+2+3+4+4
- ベース:4+3+2+4+4
- ドラム&パーカッション:4+5+4+4
ある程度すると、少しだけピアノ旋律の音型が変化するが、聴いている側はそれを自然と受け入れてしまう。
大筋で流れているあのテーマにその心を委ねてしまうのだ。
音楽における変化・逸脱も、基準があってこそ成り立つものであり、その基準からのズレの度合い、仕方などを楽しむのである。
(変化しっぱなしであると不安定極まりないので、曲のループによって元の鞘〜音型におさまる)
このようなちょっとした変化に気がつき楽しみながらも、同じ流れを感じて先へ進む、これは音楽でも日常でも同じことだろう。
永夜の術を行使して夜を止めたあの日も、次の日になってしまえばただの過ぎた一日になってしまう。
幻想郷の日常という平均値の中に、永夜抄も含まれてしまうのだろう。
かすかな変化、均してしまえば埋もれてしまう違い、それは日常の中に在るエッセンスなのかもしれない。
P.S:月が出るころに咲き、月が沈むとしぼむのが月見草。
永夜抄も見事に一夜限りの物語、その終わりにはふさわしいのでしょうね。