シンデレラケージ 〜 Kagome-Kagome

今日の雑考テーマは5面道中曲です。
この楽曲は”Cradle - 東方幻樂祀典 - ”にも収録されているので、そちらとも少し絡めた内容に。




タイトルにも現れているように「かごめ かごめ」をテーマに据えた楽曲、そして和風ホラーというコンセプトのもとに作曲されている。
それだけあって、楽曲中に「かごめ かごめ」を想起させるフレーズが散りばめられている。
「かごめ かごめ」というわらべ歌の解釈については本当に諸説あり、多様であるので、歌詞の解釈の紹介は今回は省くことにする。
書籍のみならずWeb上でも数多く見つけられるので、気になった方は調べてみると面白いだろう。


東方永夜抄における「かごめ かごめ」の意味するものは、おぼろげにも見えているはずだ。
その意味するもの、それは各プレイヤーごとがそれぞれに感じたものが全て正解となりうるだろう。
もともとが短い旋律だからこそ、そこに多くの多様性が含まれているはずだから。


なお、自分の考えとしては以下のとおりである。
(しかし、その一部は籠の中の状況を楽しんでいるようでもあるのは気のせいだろうか)

  • 蓬莱の薬製作という罪の報いによって、地上という籠に囚われ続ける輝夜
  • 蓬莱の薬を呑んでしまった報いとして、永遠の生という籠に囚われ続ける妹紅
  • 弾幕という籠に囚われているプレイヤー


では楽曲を実際に見ていくことにする。
イントロでは暗い三度の音程(鍵盤でいけば白鍵のラ+ドの関係)で「かごめ かごめ」をモチーフとしたメロディを歌ってくるのだ。
ピアノの間奏を受けて主旋律となるブラスが大きなフレーズを奏でる。
裏では16ビートで刻まれているものの、バスドラムやスネアはそれほど前面には出てこない。
明確に刻み過ぎない事によって「かごめ かごめ」のもつ童謡・唱歌的な穏やかな進行が成立しているのだろう。
ある程度進行していくと、また「かごめ かごめ」をモチーフにした旋律が和楽器(おそらく三味線だろうか)の音で帰ってくることになる。
その後はブラスの旋律と「かごめ かごめ」の旋律が絡み合いながら進行していく。



「かごめ かごめ」の持つミニマルミュージックとも思える単純な旋律は、
知らず知らずのうちに精神を高揚させていく効果を楽曲に付与しているのだろう。
曲中で行われる転調も手伝って、聞き手はある種のトランス状態へと導かれる。
日本的な懐かしさと、形容しがたいもの悲しさ、そしてそこはかとない狂気に導かれ、この曲は高みへ飛び立っていくのである。


この事に加えて「かごめ かごめ」の持つ別の側面が有効に効いてくる。
イントロのフレーズを聞いた刹那、誰しもが持つある経験を想起してしまったはずだ。
それは子供の頃、友達と一緒に繰り返し遊んだ「かごめ かごめ」の遊戯である。
あの幼き頃の小景を記憶の底から掘り起こしてしまうのだ。
それは、摩訶不思議な「かごめ かごめ」という呪文の効果の一つなのだろう。


ここで一つ思い返してみることにしよう。
永夜抄のプレイ中にもかかわらず、無意識にも歌詞を口ずさんでしまった経験は無いだろうか。
自然と歌詞を口にしてしまった人は、この呪術が綺麗にかかってしまったものだとも考えられるであろう。
あの小気味よい節回しととらえどころの無い呪文、繰り返される小さな単位音楽、そして幼き頃の遊戯の記憶
これらが絡み合ってあの独特な世界を構築しているのだろう。