少女綺想曲 〜 Dream Battle ・ 恋色マスタースパーク

今回の雑考対象は4面ボス曲です。
それぞれ別々に扱おうかとも思いましたが、様々な事情により一回にまとめてしまいました。




少女綺想曲は霊夢のテーマであり、元となった曲は第四作・東方幻想郷の4面ボステーマとなっている。
今回は完全に一部のプレイヤーが抱くであろうデジャヴュを狙ったらしく、
新規に書き下ろすことなく過去曲のアレンジを用意したとの事である。
この楽曲については、上海アリス幻樂団の「東方幻想的音楽(音楽置き場)」にMidiデータがが、
「東方幻想懐古曲」にはPMDデータがあるので、気になる方は確認してみると面白いだろう。


冒頭のブレイク直前までに奏でられる独特な音は、博麗の巫女たる霊夢が霊力を溜めているかのようなイメージを想起させる。
霊夢とプレイヤーの弾幕ごっこという点で捉えると、Win版の東方では初となる。
(西方まで考慮すると、秋霜玉のExステージでVivitと二人が対決しているが)
そのようなプレイヤーキャラとの対決を、盛り上げてくれる音があのうねりを伴った音である。


そしてサビとでも云うべきメロディが来るわけだが、ここで真っ先に耳に飛び込んでくるのが懐かしいあの電子的な旋律であろう。
あえて生の楽器の音ではなく、人工的な音色をメロディに配置したのは、プレイヤー側に
PC98で出されていた5作目までのFM音的な音色を想起させるため、と思われる。
(採用されている波形は、鋸波か矩形波だと思われる)
それが判らないという方であっても、初代ファミコンサウンドを想起してもらえば、大体のイメージが一致するだろうか。
ここでまたしても昔懐かしい記憶を掘り起こされるのである。


そして、音色的には硬めな電子音のメロディの裏で、自由闊達にアルペジョと跳躍音形で彩を与えるピアノがある。
ある瞬間からはメロディを受け持ったりもしているパートであり、この楽曲の要ともいえるだろうか。
このピアノの奏でる旋律に関してはもはや捉えどころがない、と言ってしまっても過言ではないかもしれない。
さらにコレだけの曲調にもかかわらず、低音を支えるベースとドラムの主張はそれほど激しい物ではない。
ハイハットとスネア、タムがリズムに締まりを与えると同時に、バスドラムはメロディの裏でかすかにいる程度なように思える。
(それでもリズムの下支えについては、ベースとドラムできっちり行われていたりする)
これらの要素、ふわふわ踊り実態を捉えられない旋律とリズムライン、これらは"主に空を飛ぶ程度の能力"を持つ博麗霊夢
楽曲中で一番良く表現している要素、とみなすことも出来そうだ。




さて、恋色マスタースパークへと移ることにする。アレンジ元となった楽曲は第二作・東方封魔録の恋色マジックである。
こちらもMidi,PMD両データがあるので、一度聞いてみてもよいだろう。


こちらの楽曲のメロディは、少女綺想曲に比べるとわかりやすい構造をしている。
先ほどのようにメロディがアドリブで踊り回るような事はなく、ある程度の定型を持っているのがわかるだろう。
そういう意味では"普通"の音楽と捉えることが出来そうである。
そしてループ直前でサビを導くためにいったん落ち着く箇所では、高音部になにやら輝かしい音がする。
魔理沙が繰り広げる弾幕・星屑達の奏でる音だろうか、なにやらロマンチックである。


そして少女綺想曲と比べて決定的な違いを一つあげるならば、それははベースとドラムの音圧になるだろう。
自己主張を殆どしていなかった少女綺想曲と比較すると、これらのパートは明らかに前面に来ている。
これらのパートが際立つようにしているのか、低音域が恐ろしく強調されているのである。


この事は、努力家である魔理沙をイメージするに十分な要素だろう。
楽曲の下支えという、本来ならばあまり注目すべきではない部分で、半ば自己主張をするかのように音をかき鳴らし続けている。
そして楽曲自体を前へ前へ押しやろうとしているこれらのパート、見えない所で研鑽を重ねる魔理沙の姿が滲み出ているようでならない。
水面を優雅に泳ぐ水鳥も、水中では足で水をかいているから前進できる、そしてこの音楽は
低音域を司るベースとドラム(主にバスドラム)が主体となって推進力を生んでいるのである。
そして魔理沙は………人目に知れず努力を重ねているのだろう。




これらの楽曲を端的に表現するならば以下のようになるのかも知れない。

  • 霊夢(少女綺想曲):柔、技、天
  • 魔理沙(恋色マスタースパーク):剛、力、地

しかしこれらで十分と言うわけでもない、それほどまでに彼女達の音楽、そして彼女達の奥は深い。