永夜の報い 〜 Imperishable Night.

今回の永夜抄の音楽雑考のテーマは4面道中曲になります。
普通にプレイしている人ならば、製品版で最初に聞ける新曲ということになるはずです。
いつもどおりまとまりの無い文章&私見満載ですが、それらについてはどうかご容赦を。




この曲はタイトル画面で流れるテーマ"永夜抄 〜 Eastern Night. "のアレンジ曲です。
Eastern Night.(コレより以後では原曲と表記する)が静を司るならば、こちらは動を司る楽曲、とでも言えそうな程に
軽快なアレンジがなされている。


リズムパートを担当するドラムの存在によって、楽曲に強力な推進力を与えられている。
途中ad lib的な動きを織り交ぜながら、アップビートによって奏でられる主旋律は
原曲が持っていたあの重々しさをその影に隠してしまっているかのようにさえ思える。
かと思うと、中音〜低音域で引っ張り続けるロングトーンの存在によって
原曲の持つビジョンを継承することに成功しているようだ。


また今回も謎の幻想パートが要所要所に配置されていたりするが、今回の音は本当に形容しにくい。
(そもそも人間の言葉で表現されるべき音ではないのかもしれない)
音のイメージは吹き抜ける風の音か、竹林を闊歩する魑魅魍魎たちの声か、
それとも時間の流れに逆らおうとする者だけが聞こえる時空の嘆きか。
しかし、この楽曲内で聞く限りではあまり気にならない存在となっている。
それまでに矮小な存在なのか、それともプレイヤーが意識から切り捨てているだけか。


この楽曲で、えもいわれぬ焦燥感を駆り立てる要素が変拍子である。拍子は原曲どおり(3+3+3+2)だろうか。
原曲では推進力を生み出すのに一役買っていた要素ではあるが、ここでは逆に何かに追い立てられるようなイメージを想起させられる。
そこにシンコペーションも加えることで、前へ突っ込む勢いを極限まで引き出してしまっている。
夜を止めてでも駆け抜けなけばならない、そして夜を止めたからには何としてでもこの異変を解かねばならない、
そんな意志が楽曲にまで現れているとしか思えない。


さらに、曲中で一部4分打ちとなる挿入部分があるが、ここでも狂気というか焦燥感というか、
せわしない印象を引き出される様相がある。
それは旋律が終止する瞬間に、さらに(今回の曲では同じ旋律を用いて)別のパートが食ってかかるという
普通のポップスで言うところのクロスオーバーでしかないわけだが、そのクロスオーバーによって
何かを待ちきれない、落ち着かない心境を反映することができるようになっていたりするのだろう。




ここで一つ疑問が起こる、何故今回は4面道中曲をタイトル曲のアレンジとしたのだろうか?
従来の作品からすれば、竹林を駆け抜けるイメージを別に用意し、まったくの新曲とすることも可能であっただろう。


これは推論であるが、四面ステージを使って永夜抄の(表面上の)テーマの再掲を狙ったのではないだろうか。
4面ボスには、プレイヤーが夜を止めた理由を理解できなかった幻想郷の人間が立ちふさがることになる。
そこで交わされる会話には当然プレイヤー側の弁明が行われるわけであるが、それを見ることによって
この物語のストーリーを意図せずとも再確認していたりしないだろうか?
そしてこの夜を止めた物語は、これから激動を迎えていくこととなるはずである。
ストーリーの再認識という効果を十分に発揮させるためにも、4面ではタイトル曲のアレンジを採用したのではないかと思う。
そう、タイトル曲の時点でおぼろげに感じていたイメージを、記憶の底から掘り起こすことを狙っていたとすれば説明がいきそうである。




さぁ、永夜抄の本当の恐ろしさはここから始まる……止まった時間、凍った記憶、心の篭目を解いた刹那に、何が見えるというのだろうか?