STGと集中力

少し話題が変わるので見出しを付け直し。


この楽曲(懐かしき東方の血)は(一部の音階は経過音としての使用にとどまっているものの、)珍しく西洋音階の7音をキチンと有している。
しかし、どことなく民謡やブルース的な要素も感じられるので、完全な西洋音楽ともなりきっていないと思われる。


さらに、この楽曲では明らかに曲のループ直前でフレーズを収める処理を行っている。
音楽的な解釈で行けば、導音からのアプローチを用いて強い終止を想起させている。
楽曲が一段落することで緊張が一瞬のうちに緩み、心地よい安定を生み出す。


これはSTGゲームとしてみればあまり例を見ない事かもしれない。
プレイヤーが緊張を弛緩させる事は、STGゲームでは集中力の低下を呼び起こしかねない。
集中が散漫になればミスも犯しやすくなるのは当然だろう。


逆に、精神を高揚させるためには短い音型の繰り返し・展開をおこなうことも多い。
いわゆる"ミニマルミュージック"という音楽であり、ダンス音楽の一ジャンルであるTranceなどはその要素を多分に含んでいる。
このミニマルミュージックによる精神高揚と、ステージでの演出とを上手く組み合わせることで
強力な印象を植え付けることに成功した例が"天空の花の都"であろう。
暗闇を突き抜け、やうやう白くなりゆく山並みと白百合、そして最後に待つは桜の結界。
この曲こそまさに"(東方の名を冠する)STGゲームのための音楽"と言えようか。
(そのために曲と演出をリンクさせることがどれほどの労力を必要としたかは………想像を絶するのだろう)


では、"懐かしき東方の血"では何故曲に終止感を与えるような事をしたのだろうか?
それはおそらく"懐かしさをプレイヤーに認知させるため"だと考える。
故郷へ帰れば、誰もが過去を思い出し懐かしさを感じるだろう。
そこに不安定な心境が立ち入ることは無く、終止安心できる空間になる。
それを楽曲で表現するとなれば、終止感を与えることが最良となったのだと思われる。


さて、自分が懐かしいと思える場所はどこにあるのだろうか?
そしてそれは今でも帰れる場所にあるのだろうか?