幽霊楽団〜Phantom Ensemble〜


某所でこの曲が悲しげであるというコメントを見て、折角なので雑考の第1弾にしてしまいました。


この曲は東方妖々夢の4面ボス・プリズムリバー三姉妹のBGMですね。
曲調はブラス、ストリング、ピアノ(シンセ)がそれぞれに主張を繰り返すことによって騒々しさ、陽気さをあらわしているといえます。
この曲は私の中でも好きな曲の上位に居ますし、人気投票でも曲部門で一位を取るほどに東方ユーザーの心をつかんだ曲だと思います。


しかしこの曲を冷静に聴いてみると、陽気でメロディックな曲感の中に明らかに異質な物が見えてきます。


まず調性感について。この曲は長調かと思いきや短調で書かれています。
主旋律もごく一部を除き短調になっています。
このことからアップテンポでリズム自体は軽快であっても、どことなく重い音楽になっていると考えられます。
なおこの短調も楽典で言うところの旋律的短音階ではなく自然的短音階になっています。
西洋音楽でいう導音から主音への展開(長調:シ→ド、短調:ソ#→ラ)が無いので、曲に終止感、安定感を与えにくいのが特徴です。
そのため聞き手を落ち着かせることは少ないと思われ、ごった煮状態の楽曲に何か危うい印象を与えることさえあるかも知れない。
その一方で導音からの強い終止感がないことは、この曲がガチガチの短調でひたすら暗い樂曲に思えないことに何かしら寄与しているとも考えられる。



また、曲の一部でシとファを抜いた音階で動く部分があります。
これは日本の民謡や昭和の歌謡曲に多く見られる"26抜き短音階"(「東京音頭」の音階。長調だと47抜き長音階、「ペッパー警部長調)」)の動きに同一です。
そのことから、使っている楽器は西洋のものであるにもかかわらず、どこか日本的な情緒を感じさせています。
誰しもが幼いころに慣れ親しんでいるであろう民謡やわらべ歌の特徴をもっている、といっても過言ではないのかも知れません。


幽霊楽団という曲は騒霊の音楽として書かれている。楽曲名のとおりある時は騒々しく、ある時はメロディックである。
曲の変化はめまぐるしく、聞き手を飽きさせることはないだろうが、この楽曲が多くの人気を獲得した要因がこれだけとは考えにくい。
幽霊楽団の曲中に見え隠れする日本的な音楽性と、聞き手が持つ日本的な音楽性とがリンクすることで、聞き手の心に残る楽曲となったのではないか。



話題は変わるが、騒霊・プリズムリバー3姉妹の背景を考慮すると、彼女たちの存在の危うさが楽曲に反映している、とも見て取ることができる。
(騒霊、レイラが作りし肉体を持たない存在。その不安定な存在が奏でる音楽が安定な物となりうるだろうか?)
また"彼女たちの音楽は決して癒される物ではない"という旨の設定も、この楽曲に癒しを求めることが難しいことに上手く連結する。
こうして考えると、幽霊楽団という曲を構成する要素は音楽面だけで完結することはないだろう。
プリズムリバー3姉妹という騒霊も楽曲の構成要素であり、その3姉妹が存在する幻想郷というのも楽曲の構成要素ではないだろうか。
東方の文化と西洋の文化の混在する幻想郷だからこそ、この幽霊楽団という楽曲が成り立ったのではないだろうか。




文章としてまとまっていないなぁ………。また後日再編集するかもしないかも。